以下の表は、エンジンの異音別に異常箇所と修理費用をまとめたものです。
異音から異常箇所を特定し、詳細に点検をすることで、より正確に車の異常を把握できます。
異音 | 異常箇所 | 修理項目・費用 |
「カラカラ」 | エンジン(ノッキング) | スパークプラグ2,000円前後(1気筒あたり) |
「キンキン」「カンカン」 | ラジエーター | LLC(冷却水)補充1,000〜4,000円 |
「ガラガラ」「ウォーン」 | ウォーターポンプ | ウォーターポンプ交換2万〜7万円 |
「ジャラジャラ」 | タイミングチェーンチェーンテンショナー | タイミングチェーン交換10万〜20万円チェーンテンショナー交換1万円前後 |
「キュルキュル」「キュキュキュ」 | ファンベルト | ファンベルト交換1万円前後(1本) |
「ヒューン」「 ウィーン」 | オルタネーターエアコンコンプレッサーアイドルプーリー | オルタネーター交換4万〜6万円エアコンコンプレッサー5万〜10万円ベアリング単体交換1万円〜アイドルプーリー交換1万5,000円前後(1箇所) |
「バラバラ」「ドッドッドッ」 | マフラー | マフラー交換3万〜8万円溶接修理1万円前後 |
「カタカタ」「コトコト」「ドン」 | マウント類 | エンジンマウント交換3万円〜(1台分) |
「ゴロゴロ「カタカタ」 | エンジン(潤滑不良) | エンジンオイル交換5,000円前後ラッシュアジャスター交換8万円〜(1台あたり)エンジン載せ替え20万円〜 |
エンジンから発せられる異音はおおよそ9種に分類されます。
それぞれの異音の原因や詳細と修理費用について、より具体的に解説していきます。
エンジンが発するもっとも代表的な「カラカラ」という異音の多くはエンジンのノッキングが原因です。
ガソリンエンジンの燃料点火に欠かせないスパークプラグは、放電する度に少しづつ電極が摩耗していき、劣化して電極が広がり過ぎると適切なタイミングで点火できず、異常燃焼が発生し「カラカラ」「チリチリ」といったノッキング音が発生しがちです。
スパークプラグは消耗品であり、耐用走行距離10万kmを謳う特殊なスパークプラグであっても劣化具合は車種や運転方法によって変わるため、1〜2万kmごとの点検は欠かせません。
スパークプラグの1本あたりの価格1,000円前後です。すべて同時に交換するのが基本であるため3気筒エンジンなら工賃込みで6,000円程度、4気筒エンジンは8,000円程度の費用がかかります。
走行速度に対してエンジン回転数が低い場合も異音が発生します。
エンジンの瞬間的な出力不足によりエンスト直前のような振動を伴って「カラカラ」「カタカタ」と異音を発するのが「低速ノック(カーノック)」と呼ばれる異音です。
これは運転方法の問題であり、負荷が過大にならないように速度に対して適切なギア比を選択できれば低速ノックは起こりません。
また、低回転から一気にアクセルペダルを踏み込むような運転や、スパークプラグの劣化やエアクリーナーの汚れによって出力低下を起こした状態も低速ノックが起こりやすくなります。
低速ノックを頻繁に起こすような低回転での走行を続けると、エンジン内部に燃焼カスともいえるカーボンが溜まりやすくなり、これもノッキングの原因になることがあります。
ただしディーゼルエンジンから「カラカラ」と音がするのは構造上のもので、異常ではありません。
エンジンがオーバーヒート状態に陥ると「キンキン」「カンカン」と異音がしやすくなります。この金属を叩くような異音も異常燃焼によるノッキング音です。
オーバーヒートで過熱状態になったエンジン内部では、必要のないタイミングで混合気が燃焼し「デトネーション」や「プレイグニッション」と呼ばれる大きな衝撃波をともなう危険なノッキングが発生します。
場合によってはノッキングによってエンジン内部が溶けたり穴が空くことがあり、とくにオーバーヒート時は内部の過熱状態と相まってエンジンの焼き付きや破損を起こす可能性が高くなります。
「キンキン」「カンカン」という異音は、エンジンが故障する前の警告音と捉えましょう。
オーバーヒート以外でもデトネーションやプレイグニッションが発生するケースはありますが、一般的な車が常識的な速度で走行しているかぎり心配は不要です。
冷却系にトラブルを抱えた車のオーバーヒートが「キンキン」「カンカン」という異音のもっとも身近な事例といえるでしょう。
冷却水が不足しているだけなら1,000〜4,000円程度の費用で補充できます。極端に減っている場合は冷却水漏れが疑われるため、ラジエーター周りの早急な点検と修理が必要です。
エンジンから「ガラガラ」や「ウォーン」といった音がする場合は、ウォーターポンプベアリングの摩耗が疑われます。
ウォーターポンプはエンジンやモーターから動力を得て冷却水を循環させるためのポンプであり、ベアリングが摩耗すると軸がスムーズに回らなくなり異音が発生します。
ウォーターポンプが完全に故障すると冷却水を循環させられずオーバーヒートを引き起こすため異音が発生したら早期の修理が必要です。
エンジンの動力を用いて駆動する機械式ウォーターポンプの交換費用は2万〜7万円程度。一部の輸入車や新型車に採用されるモーター駆動式の電動ウォーターポンプは交換に3万〜10万円の交換費用がかかります。
「ジャラジャラ」という異音はカムチェーン(タイミングチェーン)の伸びが過大になっている場合や、チェーンの張り具合を調整するチェーンテンショナーの故障が考えられます。
カムシャフトの駆動にゴム製のタイミングベルトを使用している車は異音が出づらい傾向にありますが、チェーンを使用している車はオイル管理を怠ると、本来交換不要とされるチェーンであっても伸びが発生し異音が出るようになります。
エンジン始動直後に多少の音が出る場合は問題ありません。しかし、エンジンが温まった状態でも「ジャラジャラ」と大きな異音が出るのはカムチェーン周りの異常が確定的です。
チェーンテンショナーの交換で済めば、修理費用は部品代を含めて1万円程度ですが、チェーン交換が必要になった場合は10万〜20万円もの費用がかかります。
オルタネーター(発電機)やエアコンコンプレッサーを駆動するためファンベルトが滑ると「キュルキュル」や「キュキュキュ」といった非常に大きな音が出ます。
ベルトが滑る原因は伸びや摩耗に加え、エンジンの熱や経年劣化による硬化やヒビ割れです。異音を放置するとベルトが切れ、機器が動作できなくなります。
とくにオルタネーターベルトが切れると発電できなくなり、エンジンの不調やバッテリー上がりに陥ってしまうため、異音が発生したベルトの放置は厳禁です。
ファンベルトの交換には1本あたり1万円前後の費用がかかりますが、ベルトの状態によっては、張り具合を調整するだけで異音が出なくなる場合もあります。
ただし強く張りすぎると各補機のベアリングに負担がかかり、異音の発生原因になるため、専門家に調整してもらうことをおすすめします。
オルタネーターやエアコンコンプレッサーのベアリングの摩耗が進むと「ヒューン」や「ウィーン」といった異音が発生するようになります。
また、各装置を駆動するためのベルトを取り回すのに必要なアイドルプーリーベアリングが摩耗した場合も同様の異音が発生します。
ベアリング単体のみの交換なら1万円程度の費用で済みますが、装置本体の寿命を見越して一式交換されるのが一般的です。
オルタネーターの交換費用は工賃込みで4万〜6万円、エアコンコンプレッサーは5万〜10万円の費用がかかります。アイドルプーリーの交換は1万5,000円程度です。
マフラーに穴が開くと排気ガスが穴から漏れ出し、エンジン回転上昇にともなって「バラバラ」や「ドッドッドッ」といった発破音のような大きな音が鳴ります。
穴が空く原因は、長年の使用による錆や溶接部分の割れやである場合がほとんどです。
穴が空いたマフラーでは車検に通らず、整備不良で取り締まりを受ける可能性もあるため、極力迅速に対応する必要があります。
穴が空いたマフラーの修理方法は交換するか、空いた穴を塞ぐしかありません。
交換費用は取り付けるマフラーによるものの、相場は3万〜8万円程度。溶接で塞ぐ場合は1万円程度で修理できます。
穴の位置や状態によっては、耐熱アルミテープやパテなどを使って自分で修理することも可能です。DIYなら、わずか3,000円程度の費用でマフラーの穴を修理できます。
エンジンマウントやミッションマウントが劣化すると「カタカタ」「コトコト」といった異音とともに、車内に振動が伝わりやすくなります。
劣化具合によっては加速時や減速時、シフトポジション変更時などにエンジンが揺れて「ドン」と大きな音と振動を伴う場合もあり、このように劣化したマウント類は交換するしかありません。
修理費用相場は、一般的なゴム製マウントは1個あたり3,000〜4,000円。多くの車が3〜4点で保持されるため1台分だと工賃を含めて3万〜5万円程度です。
一部の高級車や輸入車には、液体封入式や電子制御式などの特殊なエンジンマウントが採用されており、マウント1個あたりの価格が1万円前後まで引き上がります。
エンジンが潤滑不良状態になると「ゴロゴロ」「カタカタ」といった異音が発生します。
潤滑不良に陥る原因はおもにエンジンオイルにあり、以下の4つの要因が挙げられます。
エンジン上部から「カタカタ」や「カチカチ」と鳴るのは「タペット音」と呼ばれる異音で、エンジンの稼働に必要な装置であるカムとバルブがぶつかる音です。
近年の自動車用エンジンには「ラッシュアジャスター」という部品が組み込まれ、カムとバルブの隙間が自動調整されるためぶつかる際の異音は極小です。
油温が低いエンジン始動直後に大きめの音が出るのは正常ですが、温まった状態でも大きな音が鳴るのはオイル不足や潤滑不良、ラッシュアジャスターの異常が疑われます。
潤滑不良が深刻化し、エンジンの回転上昇にあわせて「ゴロゴロ」とこすれるような異音が鳴りはじめた場合は、クランクシャフト周りの支持部が異常摩耗を起こしている可能性があります。
エンジンオイルの交換サイクルは車によって異なるものの、走行距離3,000〜5,000kmごと、もしくは3〜6ヵ月ごとの交換が必要です。
オイル交換を怠り「ラッシュアジャスター」の交換が必要になると1台分8万円以上、エンジン内部のメタル等が損傷すると分解修理もしくはエンジンの載せ替えが必要になり、最低でも20万円以上の高額な修理費用がかかります。
エンジンから異音が聞こえたら、以下の順番で対応しましょう。
こうすることで修理にかかる時間と費用を抑えられます。
エンジンが発する異音は異常箇所によっておおよそ決まっていますが、異なる場所から同じような異音が鳴ることもあります。
また、車の動作環境によって異音が出たり出なかったりする場合や、異音の原因がエンジンではない可能性も考えられます。
エンジン異音が聞こえたら、まず以下の3点に着目し記録しておきましょう。
なかでも異音が鳴った状況は次のようにより詳細な記録を残しておくことが大切です。
以上をメモしておき、修理依頼時に担当する整備士へ伝えることで、スムーズな修理が可能になります。
異音の症状が軽度の場合は、消耗品を交換するだけで音が消えることもあります。
修理に出す前に、異音発生箇所に応じてエンジンオイルや冷却水、スパークプラグなどの消耗品を交換して様子を見るとよいでしょう。
ただし、明らかな故障が疑われる異音はすぐに専門家に点検してもらうことをおすすめします。
異音は車の異常を知るためのバロメーターであり、多くの場合に各部品が寿命を迎えていることを意味します。
そのため、根本的な解決策は該当箇所の部品交換しかありません。
異音を放置して機器が完全に故障すると、出先で立ち往生したり修理費用が莫大に膨らむこともあります。
異音がしはじめたら可能な限り早期に点検と修理を実施するようにしましょう。
以下の方法を実践することで、異音修理にかかる費用を抑えることが可能です。
それぞれをより具体的に解説していきます。
高額な部品交換が必要に鳴る場合は、中古部品やリビルト品を使って修理費用を抑えましょう。
他の車で使われていた部品を流用する中古部品は、詳細が不明であるためすぐに故障してしまうリスクがあるものの、新品修理に比べて部品代は1/5程度に抑えられます。
リビルド品は、中古部品を整備した部品であり価格は新品の半額程度に抑えられ、商品によって保証がついている場合があります。
エンジンやトランスミッション、オルタネーターやエアコンコンプレッサーなど、価格が高く壊れにくい部品は中古部品やリビルド品での修理がおすすめです。
修理費用を抑えるためには、複数の業者から見積もりを取り、もっとも安く修理してくれる業者に依頼する「相見積もり」をおすすめします。
作業工賃の時間単価に大きな差があるディーラーと整備工場はもちろん、整備工場同士でも部品の仕入れ価格や従業員の給与などによって修理費用には差が生じるため、相見積もりは確実に修理費用を安くできる方法といえるでしょう。
エンジンやトランスミッションなどを交換しなくてはならない場合は、車を乗り換えることも修理費用を抑えるひとつの手です。
とくに過走行気味の車は高額な修理費用を支払って修理したとしても、元を取れるほど高値での売却は見込めないうえ、修理して乗り続けたとしても他の箇所も故障する可能性が高くなります。
大掛かりな修理が必要でなくとも新車登録後10年、走行距離10万kmを越えると各部の異音が目立ってくるのは自然なことです。
それらすべてを修理するとなると、個々の費用はわずかであっても合計すると多額の修理費用になります。
故障したタイミングは、裏を返せば格好の乗り換え時といえるでしょう。
日頃の車の使い方とメンテナンス次第で異音の発生は遅らせることができます。
しかし、車が古くなってくると必ず異音は出るため、直後の対応が肝心といえるでしょう。
トラブルが拡大するのを防ぐため、異音が出たら早期の修理が鉄則です。古い車の場合は売却して乗り換えという選択肢も取れます。
ただし異音の発生箇所によっては高額な修理費用がかかったり、一般中古車として売却すると査定額も相応に低くなり、ときには廃車を勧められることもあります。
そういった場合は単に廃車にするのではなく、廃車買取業者への売却をおすすめします。
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